小説感想 マンシェット「愚者が出てくる、城寨が見える」



愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)

愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)


精神を病み入院していたジェリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる!



ポケミスの「狼が来た、城へ逃げろ」の新訳作品。不勉強なのでまったく知らなかったのですが、ノワールの古典として有名な作品みたいですな。世の中にはまだまだワシの知らぬ面白本がたくさん存在しておる喃。まっこと宜しいことですにゃ。


で、内容ですがノワール極まりないっつーか何つーか。極限まで削られ研ぎ澄まされた文、シンプルであるが故に疾走・暴走するストーリー、「こんにちは。死ね」と言わんばかりの狂気に憑かれたキャラクターと、とにかく「ノワール」を構成するもの以外は何も入れておらず、まったくもって無駄がないとてもシャープなお話でございます。・・・が、切れ味があまりにも良すぎるので読了直後はすんげー物足りなく思ってしまったりもしますた。「あれ?もう終り?」みたいな。しばらく経ってから「ああ〜」と充足するに到りましたけれども。


ワシ的には楽しく読めましたが、「ノワールってどんなジャンルなん?」という方が読まれるとちょいと戸惑われるかも。