小説感想 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その5 ざりがに」




北野勇作さんといえば、ずばり"動物"。日本SF大賞受賞作『かめくん』はいうまでもなく、『ザリガニマン』『イカ星人』など、その作品の多くには数々の動物たちが重要なモチーフとして登場します。そんな北野さんの作品世界を、おりがみ付コンパクト文庫という形で表現したのが、『北野勇作どうぶつ図鑑』です。短篇20本、ショートショート12本をテーマ別に編集、全6巻に収録しました。『その5 ざりがに』には、、「押し入れのヒト」「ヒトデナシの海」など、タイトルからしてどこかもの哀しいヒトたちにまつわる3篇、「ザリガニさま」ほか「生き物カレンダー」の9月から12月を収めました。北野さんならではの、どこか懐しくて、どこか切ない世界にひたってください。



シリーズ第5弾。「押し入れのヒト」「ヒトデナシの海」「ペットを飼うヒト」の3篇はそれぞれタイトルにもあるよーに北野SFでは馴染みのガジェット「ヒト」をテーマにしたものであり、読後に何とも切ない感じが残ります。とりわけ「ペットを飼うヒト」はタイトルと内容のマッチ具合が神レベル。「ヒトデナシの海」は「ヒト」と「ヒトデナシ」の境界の曖昧さがよく描写された、これまたナイスな作品。完結となったショートショート集「生き物カレンダー」は味わいが深すぎる逸品。何か読んでてホッとするし、グッとくるんだよなぁ。「ザリガニさま」のほのぼの感とか「豆狸祭」の切なさとかが実にツボに入りましたとですよ。


そしてここまで読んできて、何だかやたらと付属の折り紙を折ってみたくなりましたw カラーコピーして作成してみようかしらん?