小説感想 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その4 ねこ」




北野勇作さんといえば、ずばり"動物"。日本SF大賞受賞作『かめくん』はいうまでもなく、『ザリガニマン』『イカ星人』など、その作品の多くには数々の動物たちが重要なモチーフとして登場します。そんな北野さんの作品世界を、おりがみ付コンパクト文庫という形で表現したのが、『北野勇作どうぶつ図鑑』です。短篇20本、ショートショート12本をテーマ別に編集、全6巻に収録しました。『その4 ねこ』には、3篇を収めました。「手のひらの東京タワー」ではあの怪獣を、「蛇を飼う」ではあの超能力を、「シズカの海」ではあのロボットをテーマに、昭和という時代への奇妙な郷愁を描きます。北野さんならではの、どこか懐かしくて、どこか切ない世界にひたってください。



シリーズの中では異色度がひときわ高く煌く短編集でござる。「手のひらの東京タワー」は何も考えずぼけーっと読んでたら突然の超展開(?)に思わず吹いちまったじゃねーかこの野郎。しかし切ないラブストーリーやら圧倒的な虚無をもたらすダウナー気味なラストとか読みどころてんこ盛りでワシ的には超ツボに入った短編なのであったとさ。「蛇を飼う」は超能力テーマっつーよりも少年の成長がテーマっつー感じのお話。オチがブラックでまっこと愉快。あと西島氏のイラストも神がかっていてステキ。「シズカの海」は某猫ロボットをテーマにしたこれまたダークな話。そうか!あの話は実は復讐譚だったんだね!やったね先生!こんな解釈は他にないよ!というか実に意地悪い見方してるよ!・・・つーか容易にビジュアルが浮ぶので何かすんげー重たいんだけどこの話('A`)


しかし100ページちょっとの本なのに、何この満足度。ま、でもそれは人によりけりか。