小説感想 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その3 かえる」




北野勇作さんといえば、ずばり"動物"。日本SF大賞受賞作『かめくん』はいうまでもなく、『ザリガニマン』『イカ星人』など、その作品の多くには数々の動物たちが重要なモチーフとして登場します。そんな北野さんの作品世界を、おりがみ付コンパクト文庫という形で表現したのが、『北野勇作どうぶつ図鑑』です。短篇20本、ショートショート12本をテーマ別に編集、全6巻に収録しました。『その3 かえる』には、「螺旋階段」「怖いは狐」など幻想ホラー4篇、「かカエル通信システム」など「生き物カレンダー」の5月から8月を収めました。人気沸騰中のカメリはケーキ屋を訪れます。北野さんならではの、どこか懐しくて、どこか切ない世界にひたってください。



シリーズ第3弾、今回は粗筋にあるよーに幻想的なホラー話をメインに収録されております。「螺旋階段」は虚と実の境目が曖昧になり現実が崩壊していく北野SFお得意のテーマが冴え渡る作品。ラストの主人公の境地がイイ。「楽屋で語られた四つの話」はショートショート風味の駄洒落(?)ホラー。短い分キレの鋭さが光ります。「怖いは狐」は奇妙かつ何とも微妙な後味が残る幻想譚。いつもの北野氏の作風とはちょっと違うのがまた面白く思いました。「カメリ、行列のできるケーキ屋に並ぶ」はカメリシリーズ第2弾。レプリカメのカメリの日常を描いたタイトルまんま内容なのに、ほんのり切なくなるお話。カメリ可愛いよカメリ。「生き物カレンダー」は1巻に収録されたものの続き。どの話も余韻が実に素晴らしいね!特にクラゲの話は何だかわかんないけどジーンと来た。


つーかタイトルは「かえる」だけど収録されている話の中で「かえる」に関係あるのは1本だけとゆーのはツッコミどころなのか。そうなのか。