小説感想 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その2 とんぼ」




北野勇作さんといえば、ずばり"動物"。日本SF大賞受賞作『かめくん』はいうまでもなく、『ザリガニマン』『イカ星人』など、その作品の多くには数々の動物たちが重要なモチーフとして登場します。そんな北野さんの作品世界を、おりがみ付コンパクト文庫という形で表現したのが、『北野勇作どうぶつ図鑑』です。短篇20本、ショートショート12本をテーマ別に編集、全6巻に収録しました。『その2 とんぼ』には、とある工場にやってきた奇妙な機械を描いた「新しいキカイ」、書き下ろし「トンボの眼鏡」、北野さんの原点ともいえる初期中篇「西瓜の国の戦争」の、侵略テーマ3篇を収めました。北野さんならではの、どこか懐しくて、どこか切ない世界にひたってください。



タイトルを「とんぼ」と銘打っているけど「とんぼ」テーマの作品は1編しか収録されていない罠。というか収録作「西瓜の国の戦争」が本書のメインに相応しいと思われるのでタイトルを「すいか」とすべきではないのか、と思ったりしたのだが「それ動物ちゃうやん!つーかそんな事どーでもいいわい」という至極もっともなツッコミを脳内会議で済ませたのでこれ以上この問題は追及しないものとする。


で、収録作について。「新しいキカイ」は彼岸と此岸の間を揺蕩うよーな曖昧なセカイに生きるヒトの話で、薄ら寒いよーなそれでいてほのぼのとしている何とも北野氏らしい作品。「トンボの眼鏡」は異形のホラーっぽい感じかな。ラスト近くは想像するとちょっと鳥肌。きめぇ!最後の「西瓜の国の戦争」は異星人テーマの侵略モノ・・・と見せかけておいて、いやまぁやっぱり侵略モノではあるんですが「なんじゃいそりゃ」とゆーよーな展開が待っているシュールかつステキ極まりないお話。こちらのラストは脳内ビジュアル化するとちょっと笑えるな。


というわけで「その1」に続き大変堪能致しました。いやユカイユカイ。