小説感想 アントニイ・バークリー「ピカデリーの殺人」
- 作者: アントニー・バークリー,真野明裕
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1984/06/08
- メディア: 文庫
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<ピカデリー・パレス・ホテル>のラウンジで休んでいたチタウィック氏は、目の前で話し合っている二人連れにいつとはなしに注目していた。年輩の女性と若い赤毛の男。とそのうちに、男の手が老婦人のカップの上で妙な動きをするのが目にとまった。しばらく席をはずしてもどってみると男の姿はなく、婦人はいびきをかいて寝ているではないか。異常を感じた彼は、やがて死体の第一発見者にして、殺人行為の目撃者になっていた。氏の証言から、容疑者はただちに逮捕される。疑問の余地のない単純明快な事件と思えたが・・・!?鬼才バークリーの面目を遺憾なく発揮した長編、待望の初紹介。
チタウィック氏の萌え要素で70%ほど、30%ほどで本格ミステリしている本書。このチタウィック氏ならびに登場人物たちに魅力を感じるか否かで本書の評価は分かれると思います。当方はこーゆーユーモア溢れる話は大好きなので何ら問題なく楽しめましたが、そーでない人にとってはやたら冗長でつまんなく感じるかも。本書にトライされる場合は「よーしパパ本格ミステリ読んじゃうぞー」という気負いではなく、ゆる〜いユーモア小説を楽しむっつー感じで読まれるとよろしいかと思うとですよん。そして何かある度にうろたえるチタウィック氏の様を思う存分楽しむがよかろうて。
本格部分については、「まぁバークリーの事だから何かやらかしてんだろ」と思っておられる未読の方の興味を削ぐといけないのでこの辺についてはスルーでひとつ。当方としては小粒ながらよく練られたネタだなぁ、という印象かにゃ。ラストの皮肉(発言者は間違いなく天然だが)も中々ピリリと効いていてちょっと苦笑。あんたがそれを言うのかよ。
どーも今は絶版っぽいんですが、スルーするのはちと勿体ない気がするので書店でお見かけの際には是非。