小説感想 古橋秀之「ソリッドファイター 完全版」


どこまでも青く抜けるような空の下、限定された方形のリング。
果てしなく続く闘いの時の中、限定された試合時間。
無限の中の百九十六M2、無限の中の一八○○フレーム。
アルティメット・ソリッドの審判の声が告げる。
『構えよ・そして闘え』


未発表原稿500頁を加え、ついに完全版登場!古橋秀之"幻"の名作!



一般の書店には流通してないのでisbnが振られておらず、そのため今回は紹介画像はなし。前はアニメイトで直接買うか、ハガキでの通販でしか入手できなかったよーですが、現在では電撃屋.comにてグッズ扱いで販売されているよーです。


で、内容は前に読んだ川上稔「連射王」同様、『ゲーム』をモチーフとした青春小説。「連射王」ではSTGを扱っていたのに対し、本作では格闘ゲームを扱っております。つーかぶっちゃけモデルはバーチャファイターだよなこれ。また「連射王」は「STG」という題材であり、即ちそれは人 VS CPUとの戦いというすごーく閉じた世界だったのに対して、本書で扱っているのは「格闘ゲーム」。すなわち人 VS 人であるが故、主人公とゲーセンの人々、そして開発者(主人公はデバッグのバイトもしてるので)の思いなどなど、割と広い世界の話になっているのが現役のゲーセン通い人間にとっては興味深く、また面白い。


ワシと同年代ぐらいの「たかがゲーム」ではなく「されどゲーム」と思ってゲーセンに通っている(いた)人にとってはとても懐かしく、読んでて熱くなること請け合いでございます。脳汁をどぱどぱ出しながらゲームを遊び、そして精進につぐ精進の果てにクリアした先に見える何かを求めてコインを投入し続けた経験をお持ちの方ならば目頭が熱くなってしまうようなお話。作者あとがきからちょいと言葉を引用しますが、

初代バーチャのバトルフィールドの、どこまでも青く突き抜けた空。
僕の心の一部は、未だ、あの空の下にあるように思う。



という人にとってはまさに至福の書でありませう。やっぱりゲームって人が作って人が遊ぶから様々なドラマが生まれるんだなぁ。