小説感想 エラリイ・クイーン「第八の日」



第八の日 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-6)

第八の日 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-6)


ふとしたきっかけで、エラリイはネバダ砂漠のまん中の、文明社会から隔絶した、とある村落に迷いこんでしまった。そこに住んでいるのは、教師と呼ばれる老指導者の下で、聖書さながらの共同生活を営む一団の人々であった。犯罪という概念すらも持ち合わせないこの小世界で、恐るべき殺人事件が起こった!自分の生活圏とはまったく異なる社会で起きた数奇な犯罪に、エラリイ・クイーンは単身挑んでいく。後期の異色力作!



論理の巨匠、渾身のバカミス


つーか本書を執筆したのはマンフレッド・リーではなくエイブラム・デイヴィットスン(フレデリック・ダネイはいつものよーにプロットを担当)なので「クイーン」正統作品かどーかは微妙なんだけどね。


まぁでもそんな細かいことはどーでもいい。問題は本書が恐るべきバカミスだということだ。というかダネイよくこんなネタ思いついたよな。頭おかしいんじゃないの?(註:もちろん誉めてます)


まず登場人物紹介のところに4人(クイーンは探偵役なので実質3人)しか紹介されてないのがスゲェ。本格ミステリには「登場人物一覧」に登場していないキャラは犯人足り得ない、という暗黙のお約束があるんだからもちっと登場人物紹介してやれよ早川書房。他のキャラもいることはいるんだからさ。


次に登場人物たちのイノセントっぷりがスゲェ。「犯罪?何それ美味しいの?」ってあンた。さらに教師は「嘘はつかない」キャラだし。これでどーやってミステリとして話進められるんだ?外の常識と内の常識とのギャップに戸惑うエラリイさんが実にステキだ。


さらにクイーンさんが村人たちから「神の使い」として敬われ奉られているのがナイスすぎる。理由は「本に書いてあった」から。まぁ本に書いてたなら仕方ないよね。


最後は後期クイーンお馴染みの内容を使いつつも驚愕かつ笑うしかないオチで見事に世界を閉じるところがまたイカス。これは ひどい。彼の運命やいかに!


結局ダネイはこのネタで何がやりたかったのか?と最後の最後までよくわからんままに読了してしまったワシですが、本書が愉快なバカミスであるということは間違いなく断言できるのでこの手のキワモノがお好きな方なら是非に。いやー楽しかった。