小説感想 グレッグ･イーガン「TAP」

TAP (奇想コレクション)

密室の老詩人は＜死の言葉＞に殺された!?


脳に作用してあらゆるものを言語で表現することを可能にするインプラント"TAP"。それを使用していた世界最高の詩人が謎の死を遂げた。詩人の娘から事件の究明を衣頼された私立探偵は捜査に乗り出すが･･･表題作「TAP」、体外離脱体験を描いた"世にも奇妙な物語"「視覚」、一人称による饒舌な語りの異色作「悪魔の移住」、ホラー作「散骨」、イーガンの科学的世界観が明確に刻まれた名作「銀炎」ほか、すべて本邦初訳で贈る全10篇を収録。前世紀末より評判が評判を呼びいまや「現役最高のSF作家」の評価が定着したグレッグ･イーガン、ついに"奇想コレクション"に登場。第16回配本。

やはりイーガンは素敵だ。


イーガンと言えば「ハードSF」の書き手、と思っている方。それは間違いではないが「じゃ、読むの止めよ」と思考停止するのはよせっ！勿体無いぞ！そんな貴方に本書「TAP」、超オススメ。本書に収録されている話は奇想･幻想よりの話（そりゃ『奇想コレクション』だしな）ばかりなので、すんなりとイーガン世界に没入できるはずだっ。というか読めばわかると思うけど、イーガンってガジェット自体はそれなりに難解なものを使っているけどストーリーそのものはすげぇ分かりやすいんですよ！（ずぅむ、と身を乗り出しつつ熱弁） 本書で最もイーガンらしい作品は「森の奥」「TAP」あたりで、お馴染みヒトのアイデンティティーについて取り扱った話なんだけど、設定に惑わされずに素直にストーリーの中軸を睨みつつ読むとすげぇ楽しいはず。と同時に少し薄ら寒い感じだぜ。「ユージーン」とか「悪魔の移住」、「新･口笛テスト」あたりも愉快極まりないぜ。


と、ゆーわけで本書はイーガン入門用としては最適なブツと言えましょう。本書を手掛かりに他のイーガン短編をたゆたい、そしてその後長篇に手を出してみると幸せになれるかもだよ？