小説感想 夢枕獏「闇狩り師 蒼獣鬼 <新装版>」



闇狩り師 蒼獣鬼《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 蒼獣鬼《新装版》 (トクマ・ノベルズ)


「おじさんに会えて、よかったな」少年・鳴神真人は九十九乱蔵に向かって微笑した。
「戸田幽岳が、死するまで、我が生命、天に帰るわけにはゆかぬ───」その父・鳴神素十は、死の暗黒を見つめながら、言った。
真人に害を為そうとする者が何故か事故に遭遇するのも、姉である自分がやくざにつけ狙われているのも、自分たちが鳴神素十の子であるから───。小百合から聞かされた九十九乱蔵は、いざなみ流陰陽師の家元の血を引く素十と接触し、伝説の神霊能力者・戸田幽岳とも相対することとなる。四天降魔法とは?変性女子とは?素十と幽岳の過去の因縁によって事態は複雑に絡み合い、やがて、シリーズ中、最高に凄絶なラストシーンへ突き進む。"闇狩り師"第一長篇にして最大の問題作、<新装版>にてここに甦る!



いつもの獏であった。


というわけで(?)作者自身がよく語るよーに「この小説は、とにかく面白い」というみンな大好きないつもの獏クオリティであった本書。闇狩り師シリーズの初長編ということなのですが、主役の九十九乱蔵メインで話が進むということもなく。乱蔵はむしろ狂言回し的な役割に徹し、鳴神素十と戸田幽岳に終始スポットを当てたお話でありました。この2人の怨念つーか執念つーか狂気つーか、その辺のドロドロしたところが実にステキ極まりない。凄絶なラストと煽っている通り、テンションが上がりに上がって砕け散るラストシーンはもう「さすが獏せンせだ」と唸らざるを得ませんぜ。


結構な厚さだけど獏文体マジックによりさくさく読め、かつ重厚なストーリーでありますゆえ読了後の充実感はハンパありませぬ。つーわけでワシ的には「まぁアミーゴ、まず読ンでみよーか」と大いにオススメしたい作品でありますよん。