小説感想 麻耶雄嵩「隻眼の少女」



隻眼の少女

隻眼の少女


自殺する場所を求め寒村の温泉宿を訪れた大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に遭遇する。犯人の罠により殺人犯と疑われた静馬を見事な推理で救った、水干姿の隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬は助手見習いとして、みかげと共に事件の謎に挑む。



やっぱり邪悪。


いやまぁ、麻耶雄嵩氏はほンと弄れてるなぁ・・・と一読感嘆するしかねぇってくらい練りに練られた内容。読後のやられた感は半端ありませんぜマジに。一応というか十分にフェアなので納得の敗北。実に清々しい微笑を浮かべることができました。王道を歩みつつもどこかで道を踏み外すこのトリッキーな作り、まさに麻耶雄嵩の真骨頂よ。横溝的世界観にありがちな連続首切り殺人をよくもまぁここまで異形にできるもンだ。さすが麻耶雄嵩


そして語られる名探偵としての在り方。メルカトルやら木更津やらとこれまでの作品で「名探偵とは」といった事が語られてきましたが、本作でもそれが十分に語られており「麻耶たんマジパネェ」と驚愕すること請け合い。あと本の帯で探偵・みかげがツンデレと紹介されてたけど、名探偵に対する麻耶たんの態度こそが真のツンデレだよね。(ずぅむ、と体を乗り出し主張)


長いこと待たされましたが、傑作「蛍」に比類するような面白さでありました。できれば次回長編はもちっと早めにお願いします。あと一応読了後に「何か読み落とした事ねーだろーなー」とパラパラとページをめくって伏線などを確認しましたが、これはまぁ作中で語られていることだけで完結してる・・・よね。


でもまぁ推理パートについてはもちっとページを割いても良かった気がする。冗長になるかもしれンけど、でももちょっと欲しいよね・・・