デイヴィッド・ゴードン「二流小説家」



二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


ハリーは冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが…。ポケミスの新時代を担う技巧派作家の登場!アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作。



これは面白かった。つーか後半はニヤニヤ笑いが止まらなかったよ。これは良いミステリ。バカミスか否かの判定は先入観を与えないためないしょ。


以下どの辺がツボに入ったかを説明するため、ちょっと内容に触れます。未読の方はご注意を。つっても、作品の真相とかその辺には触れてませンので、見ちゃってもそこまでダメージはないかと。つーかこの本、正直あらすじ以外の情報は入れずに読むのが一番楽しめると思います。その方が絶対ニヤニヤしながら読み進められるはず。つーわけで未読の人はさっさとこのページを閉じてこの本を手に取ってください。早く!ハリー!


つーわけで以下折りたたみ。




全体的には中々にマニアックと言いますか、擦れっ枯らしのマニアの方がニヤニヤ出来る作品かと。作中に織り込まれるハリーが書いた作品の断章がかなり効果的です。最初は深いこと考えずにこの辺も流し読ンでたのですが、最後近くになってSFの断章が作中の年代とリンクし始めたときには「まさかのSF展開・・・!?」という不安感と「一体何が始まるンです?」というドキドキ感でいっぱいでしたよ。そこから「ちょっと待て、これまでに挿入されてた吸血鬼とかハードボイルドの断章も何か関係してるのか?吸血鬼が登場しちゃうのか?マジ?」と穿ち始めちゃったのが運の尽き。もうキラキラした目で先を読み進めてしまいました。この辺のバランスは狙ったのか天然なのか、恐らく狙ったものじゃないのかな。作者相当ミステリマニアっぽいし。


結末がどうなったかは読ンでのお楽しみなのですが、このシビれる感じを味わえただけでも個人的には大変満足でした。