三津田信三「水魑の如き沈むもの」



水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)

水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)


奈良の山中の村で、珍しい雨乞いの儀が行なわれるという、村に豊かな水をもたらす湖には水魑という神様がいるとも───。
その儀式の最中、刀城言耶の眼前で事件は起こる。さらに儀式の関係者が次々に不可解な状況で殺されていく。二転三転のすえに示された真犯人とは…。



やはり長編の刀城言耶シリーズはいい。


いいンだけど、最後の謎解き直前で「これが疑問点です」とまとめてくれるのはありがたい半面、ちと話の興を削いでいる気がするなぁ。まぁでも本作はオカルト的要素はあまり無く、割とベタなミステリ的展開を見せる(明らかに人の手が絡む連続殺人に発展するし)からこれで良いのかも知れンね。民俗学的な土地の習わし&得体の知れない人間関係はたっぷり堪能できたし。しかし発生している事件の内容に比べ、主役サイドのキャラがちょい浮き気味なのはどうにかならンか。無理か。そもそも部外者だから仕方ないのか。


最後の展開はビジュアル的にかなり美味しい仕上がりが期待できると思うのだけど、その辺をさらっと流してしまうあたりが三津田信三の作風なのかしらね。つーかそっち側にあまり重きを置いてないのかな。ボリューム・クオリティ共に高レベルの傑作ミステリなので、未読のミステリ者は安心してどうぞ