ドン・ウィンズロウ「サトリ」(上下)



サトリ(上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

サトリ(上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)



サトリ(下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

サトリ(下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)


1951年東京。日本的精神の至高の境地(シブミ)を学んだニコライ・ヘルは、巣鴨拘置所で服役中、CIA局員ハヴァフォードの訪問を受けた。ハヴァフォードは釈放と引き換えに、ある人物の暗殺を依頼する。ニコライは謝礼金コスタリカの旅券を準備すること、そして自分を拷問したダイアモンド少佐たちの住所を知らせることを条件に引き受ける。拷問を受けて変形した顔を整形したニコライは、フランスの武器商人を装うことになり、ソランジュという美しい女性から完全なフランス人になる訓練を受ける。やがてハヴァフォードから標的について明かされた。朝鮮戦争が始まり、中国はソ連との連携を深めているが、アメリカはこの二国間に楔を打ち込む必要があり、ある人物を暗殺して互いに反目させようと企んでいた。暗殺の標的は、中国の顧問役をつとめているKGBの幹部ヴォロシェーニン。ニコライは驚いた。母と浅からぬ因縁があったからだ。ニコライは、いまや愛し合うようになっていたソランジュに別れを告げ、ついに北京に乗り込む!人気・実力No.1作家が、孤高の暗殺者ニコライ・ヘルの若き日の壮絶な闘いを描く話題の巨篇。



これだ!これがワシらボンクラ野郎が望んだ<シブミ>だ!


ええと、本書はトレヴィニアンの「シブミ」の前日譚という位置づけの作品であります。「シブミ」でさらっと流していたニコライの過去(暗殺者への道を歩む話)を掘り下げた話。で、ワシらボンクラ野郎にしてみれば「シブミ」でニコライが使うとされていた暗殺拳<裸=殺>をたっぷり堪能できるというだけでテンションが上がるというものですよ、ええ。「シブミ」はスパイもの的な内容だったので<裸=殺>についてはほとンど触れられることなく、ワシはもやっとした感じを持ったまま読み終えたのですが(いや「シブミ」面白いですよ?)、ウィンズロウがやってくれました。これですよ。こーゆーのが読みたかったンですよ!「シブミ」でちと不完全燃焼に終わったアクションが大量に盛り込まれ大満足。ワシ幸福。キャラクターの立ち具合はモチロンのこと、展開のテンポも早く、多視点で語られるストーリーは超サスペンスフルで読ンでてワクワク感が半端ないですよ。視覚的要素というか構成の勝利というか、行間を結構割いてページを贅沢に使っているのが大変効果的です。これは実によい。これは実によい。大事な事なので2回言いました。冒険小説好きならば必読の書と言えましょう。つべこべ言わずに読むがよい。


映画化も決まっているそうなのでこちらも楽しみ。<裸=殺>がどう映像的に料理されているのか考えるだけでテンションあがるぜ。