綾辻行人「奇面館の殺人」



奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)


奇面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。館に伝わる奇妙な仮面で全員が“顔”を隠すなか、妖しく揺らめく“もう一人の自分”の影・・・。季節外れの吹雪で館が孤立したとき、“奇面の間”に転がった凄惨な死体は何を語る?前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実が圧巻の推理を展開する。名手・綾辻行人が技巧の限りを尽くして放つ「館」シリーズ、直球勝負の書き下ろし最新作。



ストレートど真ン中のド本格ミステリ


暗黒館の殺人や他の作品で見られるような怪奇趣味・ゴシック趣味はかなりのレベルで抑えられており、館シリーズ初期のころの作風を思い出させるような内容でした。何しろ冒頭から探偵役・鹿谷門実が登場し、そのままずーっと出続けるというこの原点回帰っぷり。ここのところの数作は最後に登場し単なる推理マシーン的な存在で終わっていた鹿谷さンを全面的に前に出してくるあたり、本作における綾辻氏のやる気っぷりが伺えるというものです。怪しげな登場人物・毎度おなじみ怪しげな館に加え、仮面で全員顔を隠しているという怪しげなシチュエーションも追加されるという「いかにも」的な設定で繰り広げられる本格ミステリの宴。そして明かされる真相・・・これはもうアレですよ、過去作「時計館」とか「迷路館」に負けず劣らずの内容ですよ。匠の技術により覆い隠されるこのネタには素直に脱帽と言う他にない。読み終えたら色々と確認したくなるぜこいつぁ。


というわけで本格ミステリ野郎は必読の書といっていい作品。こーゆーの読むと本格って楽しい、って素直に思えるなぁ。