夢枕獏「闇狩り師 崑崙の王<新装版>」



闇狩り師 崑崙の王《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 崑崙の王《新装版》 (トクマ・ノベルズ)


なつかしい男の声であった。「遅くなっちまったな」乱蔵が言った。びくんと、圭子の全身が震えた。へたり込みそうになった圭子を、乱蔵の、太い、大きな手が包んだ。悲鳴が溶け、激しい嗚咽となって、圭子の唇から、乱蔵の分厚い胸へあふれ出た。


卒論で安土城をテーマに調査を重ねるうち、長野県木祖川町の旧家、久我沼家にまつわる呪いに巻き込まれた女子大生、露木圭子。謎の老人寒月翁や、異様な体術―鬼勁を操る贄師紅丸らが跋扈する中、囚われの身となったところに、救いの手をさしのべたのは・・・。口から犬を生みだす老人と少年。彼らにはいったいどんな関係が?“キマイラ”シリーズの重要人物、龍王院弘も登場。“闇狩り師”シリーズ最大のヴォリュームを費やして繰り広げられる、因縁と怨念と呪詛の物語、今ここに甦る。



闇狩り師とキマイラのクロスオーバー作品である本書。正直、もうキマイラに乱蔵さンが出張してもうあっちの事件も片付けちゃえばいいンじゃないかな。つーか本書、せっかくキマイラから龍王院さンが登場しておるってーのに、何か扱いがすげぇ微妙なことになっているのはどういうことだよおい。作者が贔屓しているキャラの割にはあまり報われていない感がすげぇあるよな・・・。一応本書の事件を経て多少復活したよーに思えるのだけど、キマイラ本編では未だ長野山中をさまよっているわけだからまだ油断できンな。とりあえずキマイラの続編はよ。


つーか本書、「闇狩り師」としての面白さとは別の方向に面白さのベクトルが向いている気がする。妖怪がどーのこーのって内容じゃねーし。群像劇的な面白さ・・・ってのもちょっと違う気がするけど。まぁ最終的な感想としては「いつもの獏であった」であり文句なしに面白いたまらぬ伝奇アクションなので「面白ければいーやンけ」主義のワシとしてはもうそれで全てよしとするものなりよ