夢枕獏「大江戸釣客伝」(上下)



大江戸釣客伝 上

大江戸釣客伝 上



大江戸釣客伝 下

大江戸釣客伝 下


現存する我が国最古の釣り指南書『何羨録』を著した津軽采女を中心に描く、釣りに憑かれた人々の活躍!
元禄の世の釣り勝負の妙、名人の業。絵師朝湖と俳人其角が釣り上げた土左衛門の正体は!?


生類憐みの令で釣り人はどう生きたか。
人間の愚かさ、気高さを釣りの世界を通して描く。



獏せンせの趣味がこれでもかと全面に押し出された、釣りを主題にした時代小説。バックグラウンドが徳川綱吉の治世、すなわち生類憐れみの令であり「釣り」を嗜む人たちにはかなりきな臭い時代であるがゆえの厭世感が全面的に漂う味わい深い作品となっているのですが、まぁ結局はいつもの獏せンせの本です。あまり小難しいこと考えずに、「釣り」という魔物に魅入られた人たちの個性極まる生き様と矜持を堪能するがよろしかろうて。


つーか本書、ある意味獏せンせの新境地っつーか、ワシが単に知らぬだけなのかも知れませぬが「こーゆーのも書けるンだなぁ」としみじみ読了後に思ってしまいました。ラストシーンとか胸に迫りすぎて泣けるぜこれ。やはり獏せンせはいい・・・