ケイト・モートン「忘れられた花園」(上下)



忘れられた花園 上

忘れられた花園 上



忘れられた花園 下

忘れられた花園 下


1913年オーストラリアの港に着いたロンドンからの船。すべての乗客が去った後、小さなトランクとともにたったひとり取り残されていた少女。トランクの中には、お伽噺の本が一冊。名前すら語らぬ身元不明のこの少女をオーストラリア人夫婦が引き取り、ネルと名付けて育て上げる。そして21歳の誕生日に、彼女にその事実を告げた。ネルは、その日から過去の虜となった・・・。時は移り、2005年、オーストラリア、ブリスベンで年老いたネルを看取った孫娘、カサンドラは、ネルが自分にイギリス、コーンウォールにあるコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか?ネルとはいったい誰だったのか?茨の迷路の先に封印され忘れられた花園のあるコテージはカサンドラに何を語るのか?



翻訳ミステリ大賞受賞作ですのでもう読まれた方も多いはず。つーかワシこれ読ンだの今年の3月末頃だっつーのにどうして今まで感想書かなかったのだ(´・ω・`) (解:感想待機状態の本の山に埋もれてた)


つーかタイトルからしてワシ当初は割とほのぼの系かと思っていたのですが、実際の中身は結構なサスペンスっぷりで異様なまでのギャップに驚いた感がありました。いやワシが勝手に思い込ンでただけなのですが。中身としては3世代に渡る女性たちの話が交互に語られるよーな形なのですが、この騙りのテクニックがハンパない吸引力で先が気になりすぎて超読まされますよ。そして個人的に面白いと思ったのが物語の作り。3世代、それぞれ女性たちのエピソードは相互に絡み合い最後に収束するというかまとまるところにまとまるというまぁぶっちゃけありがち(王道)なストーリーなのですが、最終的に全体として「何が起きていたのか?」というストーリーラインは読み手にしかわからないのが結構なワシのツボ。現代パートのカサンドラさンは過去の細かいエピソードを知ることはないので、この辺は読み手が「あーだからかー」的ニヤリ感が味わえます。結構な重厚っぷりですよ。


翻訳小説の楽しさがたっぷりつまった傑作です。ワシ的に超おすすめ。