松崎悠希「あがり」

あがり (創元日本SF叢書)

女子学生アトリと同じ生命科学研究所にかよう、おさななじみの男子学生イカルが、夏のある日、一心不乱に奇妙な実験をはじめた。彼は、亡くなった心の師を追悼する実験だ、というのだが・・・。夏休みの閑散とした研究室で、人知れず行われた秘密の実験と、予想だにしなかったその顛末とは。第一回創元SF短編賞受賞の表題作をはじめ、少しだけ浮世離れした、しかしあくまでも日常的な空間―研究室を舞台に起こるSF事件、全五編。理系女子の著者ならではの奇想SF連作集。

表題作のアイデアはありそうでなかった。


第1回創元SF短篇賞を受賞した「あがり」。双六で「あがり」を迎えるように遺伝子的に「あがり」を迎えた場合はどうなってしまうのか？的な、指摘されれば「その発想はなかった」的ありそうでなかったアイデアを使った表題作には正直脱帽ものですよ。この奇想はすごい。そしてオチがすげぇ。結構なリアルさがあって怖いわ！


それ以外の話は割とミステリ風味の味付けがされていたりしてSF者にも親しみ安い気がいたしやす。ちなみにワシ、収録作の中では論文提出の義務を背負った「不可能もなく裏切りもなく」あたりが色々と自分のことを考えるとツボ。大学時代に学生の論文をパクって己の論文を提出しないファック極まりない助教授と戦った覚えがある人間には身にしみますわ・・・(´・ω・｀)