小説感想 ディクスン・カー「猫と鼠の殺人」




猫が鼠をなぶるように、冷酷に人を裁くことで知られた高等法院の判事の別荘で奇々怪々の殺人事件が発生した。被害者は判事の娘の婚約者で、しかも現場にいたのは判事ただ一人。法の鬼ともいうべき判事自身に、皮肉にも重大な殺人容疑がふりかかったのだ。判事は身の潔白を主張するが状況証拠は不利になるばかり。判事は黒なのか白なのか?そこへ登場したのが犯罪捜査の天才といわれる友人のフェル博士。意外な真犯人と、驚くべき真相を描くカー会心本格ミステリ



やられたーっ!


大トリックが仕掛けてあるわけでもなく、オカルトめいた雰囲気が支配する事件でもないのですが…。それが逆に事件の構成をスッキリさせていまして、解決編がとってもわかりやすいです。また登場人物が少ないので犯人がわかりやすいかと言えばそうでもなく。(犯人の隠し方が実に絶妙)


カーらしくないと言えばらしくないんでしょうが、終盤はどんでん返しが連発。
「これぞ本格だっ!」とばかりに、本格の醍醐味を堪能しましたよ、ええ。素晴らしい。


オカルト、スラップスティック要素は皆無に等しいですが、実に素晴らしい本格でした。
さすが不可能犯罪の巨匠・カーだぜ!