小説感想 獅子宮敏彦「砂楼に登りし者たち」
- 作者: 獅子宮敏彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/04/09
- メディア: 単行本
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どことなく貧相に見える牛に乗り、弟子の若者を連れて諸国を旅する小柄な老人。頭にすっぽりと頭巾を被った、達磨の座像を思わせるこの老人こそ、天下一の名医の呼び声も高い残夢である。しかしこの残夢、行く先々で怪事件にばかり巡り合う。合戦の最中に密室から消失した姫君、不可能状況下での刺殺事件、忍者軍団の死闘の裏に潜むからくり…。
室町幕府崩壊前夜、諸国を放浪する伝説の医師の名推理。第十回創元推理短編賞受賞の気鋭が満を持して放つ、トリックへの情熱にあふれた伝奇的連作本格推理!
愉快な伝奇ミステリ。
傑作バカミス、というほどではありませんでしたが中々面白かったですよ。4本から構成される連作短編なので、例によって以下ミニコメを。
「諏訪堕天使宮」
人体消失を扱ったお話。世界観が世界観なので、消失事件を「か、神隠しじゃぁ!」の一言で終わらせてしまっても全てを許してしまいそうなのですが(;´Д`) 世界観とシチュエーションを巧く活かしたトリックには感心。
「美濃蛇念堂」
無茶なトリックというか、この世界観だからこそ許されるというか(;´Д`) 現代ミステリでこんなトリック使ったら非難轟々ですよ?(いや、寧ろ盲点かもだ) とりあえず笑わせてもらいました、オチもいいですね!
「大和幻争伝」
忍法キター! トリックは無茶ですがこれぞ伝奇ミステリですよ!もう山田風太郎先生を彷彿とさせる忍法が出た時点でニヤリとできるのですが、その忍法をミステリ的見地から解体するのがまたニクイ。本作品集で一番のお気に入りです。ああ愉快愉快。
「織田瀆神譜」
本作ラストを締めくくるに相応しいエピソード。全ての話が直接リンクする、というわけではないのですがエピソードの関連性というか相互関係というか、実に綺麗なまとめとなっております。本能寺の変についての説明は某ミステリでの先例がありましたので斬新さは感じませんでしたが、知らなければ「ほぅ」と思うのではないかな?
中々の好短編揃いの佳作、結構オススメです。
個人的な欲を言えば、もう少し傾いて欲しかったところ。もっと忍者を!もっと傾き者を!