小説感想 有栖川有栖「白い兎が逃げる」



白い兎が逃げる (カッパ・ノベルス)

白い兎が逃げる (カッパ・ノベルス)


「君を好きになった。君も僕に興味を持って欲しい。それが無理なら、離れたところから君を見守っているだけでもいい」───。ストーカー行為に悩む劇団<ワープシアター>の看板女優・清水玲奈。彼女を変質者から引き離すプランは、成功した筈だった。ところが、ストーカーの死体が発見され、事件は思わぬ展開に!
臨床犯罪学者・火村英生の論理的思考が冴え渡る、4編の傑作本格推理!



超安定した内容の佳作短編集。それでは例によってミニコメを。


「不在の証明」


これは結構お気に入り。「双子」が登場した時点でニヤリとしてしまうのですが、思いのほか捻った内容でかなり予想を裏切られました。真っ当なアリバイ崩しと見せかけて、実は…というパターンはかなり好き。


「地下室の処刑」


月氏の「死刑囚パズル」をちょっぴり彷彿とさせる内容にニヤリ。作者としては『意外な動機』がポイントだそうですが、個人的にはそこまで意外ってわけでもないかな?設定の妙に感心。


「比類のない神々しいような瞬間」


作者自ら「旬のネタを使っているので賞味期限に注意」と語っているよーに、タイミングを逸すると「ふーん」という程度で終わってしまうトリックを使っているその心意気に惚れた。(えー) 個人的には序盤で使っていたダイイング・メッセージの解法が好みのアイディアでしたとさ。


「白い兎が逃げる」


鉄道を使ったアリバイ崩しもの。偶然から犯人が特定された、ってのはちょっと戴けないなぁ(;´Д`)






まあ可も無く不可も無く、といった内容でした。読んで損した、ということはないと思いますよ?