小説感想 ヒラリー・ウォー「失踪当時の服装は」



失踪当時の服装は (創元推理文庫 152-1)

失踪当時の服装は (創元推理文庫 152-1)


1950年3月、アメリカ、マサチュセッツ州の女子大学から、ロウエル・ミッチェルという美貌の女子学生が失踪した。クラス・メイトの評判もよく、うわついたうわさもなかった。しかも彼女は白昼、こつ然と姿を消してしまったのだ。警察署長フォードは長年の経験をたよりに、この手がかりのない、雲をつかむような事件に介入する。捜査の実態をリアルに描き、警察小説に新風をもたらしたヒラリー・ウォーの代表作。はたして失踪か?自殺か?他殺か?誘拐か?



渋いねぇ…まったくおたく渋いぜ!


もう渋すぎるにも程があるっつーぐらいに渋いミステリ。ボキャブラ天国風にゆーならば渋知。(古いなオイ)
警察小説ですので、トリックらしいものは何ひとつ存在しないのですが、だが それが いい。


冒頭から「女子学生の失踪?どーせセックスがらみだろオイ」と決め付け捜査を行う警察署長フォードのキャラがステキ極まりないのもまたナイス。冒頭の展開では無能っぽく思えるのですが、ページを進め彼のキャラクターが掴め始めるとどんどん感情移入してしまいまして。


ラスト1行、執念の長き捜査の果てに彼の口から紡ぎ出される言葉が実に素晴らしい。映画のラストシーンちっくというか、まさにこの「失踪当時の服装は」の世界を閉じるに相応しいセリフ。たまらん。


翻訳がちょっと難いかなぁ、という気がしないでもないですが(;´Д`) 海外ミステリ好きなら抑えておいて損はない作品かと。面白かったです。