小説感想 野崎六助「イノチガケ 安吾探偵控」



イノチガケ 安吾探偵控 (創元クライム・クラブ)

イノチガケ 安吾探偵控 (創元クライム・クラブ)


突然倒れ、血を流して死んだ徴用工の事件をきっかけに、いつものように安吾のもとへ賢人同盟の仲間が集まる。教員、保険員、記者、戸籍係など様々な職業の彼らは、探偵小説という共通の趣味で結ばれている。
しかし焼夷弾の降る夜毎、その賢人同盟員が次々と殺される。一人は締め切られた防空壕の中で串刺しに。また一人は走る首なし死体として発見され……。数多の推理と打消しの末、安吾が目にした真実とは……。
戦時下の東京。空襲と連続殺人の二つの恐怖の中で繰り広げられる、瞠目の長編本格推理。



探偵役が坂口安吾である理由が、読了した今もイマイチよくわからんとです(;´Д`)


だって別に安吾じゃなくったって、十分成立しうる内容だし。あんまり深い意味は無いんかいな。


おっと閑話休題


さすが評論家*1が書いたミステリなだけあって、実に評論受けがよろしかろーなぁと思ってしまう内容でした。ある程度のミステリ者ならば、あらすじ読んだだけで「あ、『大量死』がテーマね」と思われたことでしょ。


焼夷弾による犬死ではなく、あえて特異な死を遂げることによって、その死を探偵小説への供物とする。この辺のテーマは笠井潔氏やら法月綸太郎氏やらが評論で深く掘り下げていたと思うのですけれども、そのテーマを噛み砕いてわかりやすく説明を加えつつ、かつミステリとしても手抜きがない本格推理小説として構成しているのは正直感心。つーかちょっとこのオチは読めませんでしたよ(;´Д`)


文体がちょいと堅苦しいですが、中々の良作ではないかと思われます。たまにはこんな評論っぽいミステリもいいかもだ?

*1:野崎六助氏は「北米探偵小説論」などの評論でミステリ者には名が知れ渡っています