小説感想 ブラッドベリ、スタージョン他「地球の静止する日 SF映画原作傑作選」
- 作者: レイブラッドベリ,シオドアスタージョン,中村融,Ray Brudbery
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/03/23
- メディア: 文庫
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メリエスの昔より、SFは映画とともに歩んできた。本書はそうした綺羅星のごとき名作SF映画の数々の中から、知られざる原作短編を精選して贈る、日本オリジナル編集のアンソロジーである。古典として愛されつづけている表題映画の原作に加え、ブラッドベリが近年になって初めて公開した「イット・ケイム・フロム・アウタースペース」原作、スタージョンによる原作として伝説的に語られてきた「殺人ブルドーザー」など、本邦初訳を収録。また、やはり初訳のハインライン「月世界征服」には著者自身が撮影の舞台裏をしたためた顛末着を付した。
お腹いっぱい。
まずはちょっとこのラインナップを見てくださいよ。
- レイ・ブラッドベリ「趣味の問題」 (「イット・ケイム・フロム・アウタースペース」)
- ウォード・ムーア「ロト」 (「性本能と原爆戦」)
- シオドア・スタージョン「殺人ブルドーザー」 (「殺人ブルドーザー」)
- ドナルド・A・ウォルハイム「擬態」 (「ミミック」)
- ハリイ・ベイツ「主人への告別」 (「地球の静止する日」)
- ロバート・A・ハインライン「月世界征服」 (「月世界征服」)
もうこれだけでお腹いっぱいですもう勘弁してください、と言わんばかりのセレクトなのですが、内容もこれまた濃いものばかりなので腹八分目どころか腹十二分目でもうはちきれそうですよ。(何その例え)
ま、ぶっちゃけるならば実に堪能したの一言に尽きるんですけれども。「擬態」が個人的にちょいとイマイチな感じがしましたが、他は全部ツボにどんぴしゃりな作品ぞろい。レベル高い作品集っすよ。
中でもスタージョン「殺人ブルドーザー」とハインライン「月世界征服」の面白さは異常。「殺人ブルドーザー」は題材が題材なので、映像を脳内ヴィジュアル化すると微妙に笑えるのですけれどもスタージョンの筆力もあってか異様なまでにサスペンス性の高い、パニック&アクション小説になっております。「月世界征服」はなんつーか、希望ある話のよーでじんわり押し寄せる絶望感があるよーで、あまりにも味わいのありすぎるラストまで含め全てがああもう最高!たまらん。
あと「主人への告別」の意外性とか、ブラッドベリ「趣味の問題」の微妙な後味の悪さとかもワシ的にはポイント高いっす。「ロト」は静かに狂っていっている世界観がいいな。
つーわけでワシ的には大満足の本書。お値段が文庫のくせに1000円もしやがるんですが、コスト的には十分満足のいく内容だと思います。ささ、未読の方は是非に。