小説感想 フィリップ・マクドナルド「鑢 名探偵ゲスリン登場」



鑢―名探偵ゲスリン登場 (創元推理文庫 (171‐2))

鑢―名探偵ゲスリン登場 (創元推理文庫 (171‐2))


大蔵大臣ジョン・フード殺害さる───の報がいち早く<梟>紙の編集部にもたらされた。スクープ間違いない。そこで編集長はこの事件の取材に、一風変わった特派員を送ることにした。アントニイ・ゲスリン───第一次世界大戦の英雄で、明晰な頭脳の持ち主である。かくして、犯行現場をおとずれたゲスリン大佐は、一見単純そうな事件の裏に潜む真相の解明に乗り出した・・・!マザーグースの調べにのせて繰り広げられるこの物語で、名探偵ゲスリンが読者の前に初めて登場する。記念すべき古典的名作の完訳決定版。



ナイス本格っ!


何年も絶版状態だったんですが、昨年の東京創元社のフェアでめでたく復刊した本書。ずっと読みたかったのと、前に読んだ「迷路」とか「フライアーズ・パードン館の謎」とかが面白かったので、ああもうオラ何だかワクワクしてきたぞ!っつー勢いで取り組んだのですけれども・・・いやもう大満足。あまりにも強引に挿入されるロマンス要素とか、ぜんぜんマザーグース絡んでねーじゃねーかよ!、とか突っ込みを入れたいところがないわけではありませんが、それを補ってあまりある面白さがありました。


なかでも100ページ近い解決編(ロジックの展開は半分程度ですけど)は圧巻。「そこまでやらんでも(;´Д`)」っつーぐらいなロジックありーの、どんでん返しありーのでもうゲップが出そうな程に堪能いたしましたよ。オチもユーモアがあって大変いい感じです。古典本格ファン、とりわけロジック好きな人ならばきっと楽しめる作品だと思いますぜ。今買い逃すと入手困難になること必至だと思われますゆえ、悩んでいる方はとりあえず抑えておくが吉かと。