小説感想 ジョン・ブラックバーン「薔薇の環」



薔薇の環 (創元推理文庫 160-2)

薔薇の環 (創元推理文庫 160-2)


九つになるイギリス人の少年が、東ドイツを通過中の列車から姿を消した。はたして事故か?少年の父は、西ベルリンの通信隊本部に勤務していた。たまたま西独陸軍は、イギリス外務省から借りた最新型の暗号解読装置を使用中で、その装置の回路の詳細をソビエト側が知りたがっていたという。情報を得んがための誘拐事件なのだろうか?不安と緊張の中で、事件はやがて意外な方向へと発展していった・・・。東西の冷戦の谷間に展開する恐るべき真相。ブラックバーンの真価と問う、サスペンスフルな出世作



うわぁ、めっちゃ面白いぞこれ。


冷戦下での誘拐事件っつーだけでも結構なサスペンス性があるってーのに、中盤で「おいおいそんな展開かよ?」と一気にスケールが広がる大展開っぷり。あらすじから予想される内容を大きく裏切る、あまりにも強引なストーリーのテコ入れにワシもう口あんぐりですよ。つーか序盤の展開が全てこのためのネタふりだったとは・・・っ!これで話に引き込まれない読者がいようか、いやいない。(反語) 中盤以降はページを捲る手が止まりませんでしたよ。これはブラックバーンの他の作品も探してみなきゃですだよ。


総ページ数が少ないので、中盤以降はジェットコースター的怒涛の展開で一気に話をまとめあげているんですが、ワシ的にはもっとページを割いてパニックに陥る人々などの描写を増やして欲しかったかなぁ。もちっと作品内での人々の阿鼻叫喚っぷりが欲しかったです。その点がワシとしては惜しい。(でも短いが故に感じる、ストーリーの疾走感ってのも悪くないけどね)


中々の逸品ですが現在絶版らしいので、古本屋で発見の際は査収してみては如何でしょ?面白かったですよっ!