小説感想 A・Z・H・カー「誰でもない男の裁判」



誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)

誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)


「もし神がいるのなら、おれを殺してみろ!」無神論者の作家が講演中に叫んだ次の瞬間、一発の銃弾がその胸を貫いた。逮捕された犯人はただ「声」に命じられたと繰り返すのみ。名無しの男に対する擁護運動が盛り上がるなか、現場に居合わせたミラード神父は事件の調査委員長にまつりあげられてしまう。しかし、全国から寄せられた手紙の一通に男が異様な表情をみせたとき、神父の胸に恐ろしい疑惑が芽生え始める。その手紙にはただ一言、「助けて!」と書かれていた…。信仰と真実の相剋という問題に真正面から取り組んだ異色中篇「誰でもない男の裁判」、殺人事件に巻き込まれた詩人探偵がブレイクの詩から真相に到達する「虎よ!虎よ!」、ふとしたはずみで娘の可愛がっていた猫を殺してしまった牧師の苦悩を描いて、殺人事件以上の衝撃をもたらす「黒い小猫」など、EQMMコンテスト入選作を中心に、エラリイ・クイーン絶賛の異才A・H・Z・カーの傑作全8篇を収録。


  _  ∩
( ゚∀゚)彡 神!神!
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表題作「誰でもない男の裁判」があまりにもインパクトありすぎだっ!事件そのものはありきたりながらも、迎えたオチがあまりにも強烈すぎてワシもう悶絶につぐ悶絶。思わずワシ、「ええ〜?これ、ちょっと凄くね?」と呟きすぐさま再読してしまったほどですよ。なるほどこれは後世に語り継がれるに相応しい内容。正直、短編でこれほどのインパクトがある作品ってーのはそうそう存在しないよなぁ。ぱっと思いつくのは「ベナレスへの道」*1ぐらい?(ワシが寡聞にして知らないだけで、他にもたくさんあるんでしょーけど)


ガチ本格ではないので本格原理主義者な方にはオススメしにくい作品(つーか基本的に異色短編風味のものばかりです)ですが、特にこだわりが無い人ならばきっと満足の行く読書体験ができるはずだっ!つーか古典ミステリファンならば必読と言える作品かと。


他の収録作では、にゃんこ好きには悶絶ものの「猫捜し」、何と言うオチ「ジメルマンのソース」、後味が最強すぎる「ティモシー・マークルの選択」がお気に入りかな?ヘビーな作品からライトタッチの作品まで幅広く収録しているので大変楽しめました。うん、これは良い短編集。

*1:ストリブリング「カリブ諸島の手がかり」に収録