小説感想 夢枕獏「荒野に獣 慟哭す<完全版>」



荒野に獣慟哭す 完全版 (ジョイ・ノベルス)

荒野に獣慟哭す 完全版 (ジョイ・ノベルス)


御門周平は大脳病理学研究所所長の川畑総一郎の助手だったが、自ら志願してニューギニアの奇病ウィルス独覚菌を、脳に植えつけられた。ために超人的な肉体と格闘能力の保持者となる。その代わり記憶を失い、何者かに襲われる。川畑と手を組んだ土方重工業は、兵器産業にも手を染め、戸籍上死んでいる自衛隊の幽霊部隊ゾンビストを組織し、彼らに独覚菌を接種して獣化兵と呼ばれる獣人たちを造りだした。獣化兵は牛、虎、鳥などの姿を体現している。御門を襲ったのは、彼らだったのだ・・・。



たまらん。


連載期間12年!かつて刊行されたノベルス5冊!本書はそれを1冊にまとめた合本であるため、厚さが何と1000ページ近くあるのです。何ちゅー厚さ・・・っ!うーん、ウットリ。厚い本には回避しよーのない魔性の魅力があるぜっ!(恍惚とした表情で)


まぁそんな本書をお盆の休み1日を費やして一気読みしたわけなのです。つーか読み始めたら止められんかったとですよ。食事もトイレ行くのも惜しんで、朝から晩まで延々と読みふけっておりました。読み終えた後はため息しか出ませんでしたよ。恐るべき獏センセイ。恐るべき「荒野に獣 慟哭す」。な、何ちゅー本をモノにしよったんや・・・!


ストーリーも序盤からは想像もつかぬ程ぶっ飛んだ展開(日本から始まり何と国外へ!)を見せやがってくれ「ワシもうほんとお腹一杯っす」とグッタリしてしまうほどネタがてんこ盛りなのですが、やはり特筆すべきはこの破天荒なストーリーを引っ張るキャラクターですよ。獏センセイはたまらぬ男を書くのがほんと上手いなぁ。久能とか薬師寺法山とか呪師チムとか、もうほんとキャラクター立ちすぎ。特に薬師寺法山については主役に据えた外伝書いてくんね?と熱望してしまうほど惚れました。このキャラクターは生きておる・・・!


とにかく読み始めたが最後、中断するのが難しいほどのリーダビリティっぷり。1000ページもの長さなのに「ええいっ!もう終りなのかっ!」と思ってしまうほど熱中してしまうほど間違いなしの面白さです。ささ、貴方も本書を読まれて獏センセイの虜になられるがよいよいよい。(残響音)