小説感想 ロバート・ファン・ヒューリック「東方の黄金」
- 作者: ロバート・ファン・ヒューリック,和爾桃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 新書
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この慧眼から逃れる悪はこの世になし
今から1300年余の昔、唐の都を老僕のみを従えた一人の若い官吏が旅立った。海沿いの僻地の町へ、何者かに毒殺された知事の後任として赴くのだ。旅の途上で、新たに二人の信頼できる部下を得た彼は、勇躍任地へ入る。だが、そこには人食い虎が跋扈し、新妻失踪や僧侶惨殺など、数々の難事件が待ち受けていた。さらに役所には毒殺されたはずの前知事の幽霊も・・・山なす怪事件に怯むことなく立ち向かう彼こそは、後世に神のごとき探偵としてその名を轟かせるディー判事、その人だった!長きにわたる判事の事件記録の劈頭を飾る名作を最新訳で贈る。
ディー判事シリーズ第1作。長いこと絶版(電子データでは入手できましたが)でしたが、このたび新訳での復刊を遂げました。興味はあったものの、「電子データじゃちょっとなぁ」と二の足を踏んでいたワシにとって復刊は嬉しい限り。また、本書に続く初期の作品群も復刊の予定があるっつー話なのでもう今から辛抱堪りませんぜ!
で、本書なのですが・・・いやもう、ほんと最高すぎ。前知事の毒殺事件、新妻失踪事件、役人行方不明事件、人食い虎事件、幽霊騒動など複数の事件が次々と発生するサービス満点の展開(モジュラー型のミステリとも言えるかな?)、それを解明するディー判事の推理のプロセス、意表をつく手掛かり、雰囲気満点のオカルト要素、最後に明らかになる壮大な陰謀など、これでもかっ!と言わんばかりにミステリ好きのツボを突くネタがてんこ盛り。舞台が唐時代の中国、とゆーのがまたインパクトあるよなぁ・・・。本文にところどころ挿入されているイラストもまたいい味を出してるし。
細部まで作りこまれた、とても良質のミステリだと思いますゆえ、海外ミステリがお嫌いでなければ是非是非。