小説感想 マイケル・スレイド「グール」(上下巻)



グール 上 (創元推理文庫)

グール 上 (創元推理文庫)



グール 下 (創元推理文庫)

グール 下 (創元推理文庫)


<下水道殺人鬼><吸血殺人鬼>そして<爆殺魔ジャック>。ロンドンはいま、跋扈する複数の殺人鬼に震撼していた。ニュー・スコットランド・ヤードには特捜部が設置され、警視正ヒラリー・ランドは大規模な捜査の陣頭に立った。しかし彼女はまだ知らい・・・・・・・・・殺人鬼たちの背後に蠢く究極の殺人鬼<グール>の存在を!しかも事件の連鎖は、海を越えてカナダ、さらにはアメリカにまで及んでいたのだった!ヒラリーに勝機はあるのか?警察小説か伝奇ホラーか、はたまた本格ミステリかサイコスリラーか・・・ジャンルを超越する奇才がヘヴィ・メタルの轟音に乗せ、ラヴクラフト、ブロック、キングらに捧げる怪物的傑作!



カオスここに極まれりっ!


もーね、ほんと「カオス」以外の何ものでもないっすよこの本。ベースはホラーでありながらもサイコものっぽくもあり本格ミステリっぽくもある、なんとも混沌としたジャンルわけしにくい作品。つーか序盤からいきなりラブクラフトクトゥルーネタが炸裂した時点でワシ思わず吹きましたともさ、ええ。その時点で覚悟が完了してしまい、「一体この暴走ストーリーはどこへ向かおうとしてるんだ・・・?」と期待にドキがムネムネしてしまったワシは夢中で読みふけってしまいましたとさ。


つーか途中のサスペンス性っつーか、とにかく盛り上がりっぷりが半端じゃありません。「グール」のみならず、ロンドンでは爆殺魔や吸血殺人などが行われ、読んでて「一体どーまとめてくるんだ?まさか殺人鬼同士で殺し合いになるのかっ?そーなのかっ?それとも本当にクトゥルーの古きものが光臨しちまうのかっ?」といらぬ期待をどーしても持ってしまいますよこれは。そして訪れた結末は頭を抱えて「バ、バカすぎる・・・っ!」の一言に尽きる、なんともワシ好みの大層ステキな作品でございました。これだけ引っ張ってこのネタを持ってくるたぁ、中々普通の神経じゃねーなスレイド!これはグッジョブと言わざるを得ない・・・ッ!


多少(?)お下品な描写などがありますので、その辺に耐性の無い方にはちとツライかもしれませんが、大層愉快な作品であったのでワシとしては猛烈にオススメしたいところ。ギリギリのラインで本格ミステリしていると思いますので、本格好きな方も是非是非。