小説感想 カーター・ディクスン「仮面荘の怪事件」



仮面荘の怪事件 (創元推理文庫)

仮面荘の怪事件 (創元推理文庫)


数多くの名画が飾られたロンドン郊外の広壮な邸宅<仮面荘>。ある晩、飾られた名画の前で、夜盗とおぼしき覆面の男が瀕死の状態で倒れていた。だが、覆面の下から現れたのは、なんと屋敷の当主スタナップ氏、その人であったのだ。なぜ、自分の家に盗みに入らねばならなかったのか?そして、彼を刺したのは誰なのか?噂や彼の不審な言動から、いくつかの疑問の答えは明白なように思われた。だが、次々と明らかになる事実は、それらの憶測をことごとく覆してしまう。あの夜、本当は何が起きたのか?H・M卿の推理が、意外な真相を暴き出す。



ってこれ短編を長編化したものだったのね。どーりで水増し感漂う作品だと思った。とはいえ、いつもの無駄に展開されるロマンスやら爆笑必至のH・Mの登場シーンやらカーが全力で読者の腹筋に挑戦するH・Mの大奇術ショーやらのスラップスティック要素が楽しいので、ファンならあんま気にならない・・・つーかむしろもっとやれ的な印象を持たされるので、読んでて退屈することはなかったけど。というか世間的な評判は今ひとつみたいなよーなので、これを心底楽しいと思って読めるワシはもはや「どうしてこんなになるまで放置したんだっ!」的な重度のカー好きなだけなのかもしれん。


「カーなら何を読んでも面白いよ!」という手遅れなファンならともかく、普通に本格ミステリがお好きな人には途中の展開がものすごーく納得行かないと思います故、正直、オススメできませぬ。粗筋にも書いてある謎は確かに魅力的なんだけど、如何せんネタの引き伸ばしが鼻につくよなこれは。・・・でもいいんだ・・・だってワシはそんなカーが大好きだから・・・ッ!