荒山徹「柳生薔薇剣」



柳生薔薇剣

柳生薔薇剣


故国・朝鮮との縁を切るために美貌の女性うねが、鎌倉東慶寺に駆け込んだ。朝鮮で虐げられ日本に永住を決意した朝鮮の人々を、強制帰国させるために朝鮮使節団が来日したのだ。幕府内の家光派と忠長派の対立や使節団の思惑もからみ、うね争奪をめぐって幕府は二分される。名だたる剣豪や忍者群の暗躍、朝鮮妖術師も加わり、血で血を洗う暗闘が始まった。東慶寺住持・天秀尼に特別な想いを寄せる三代将軍家光は、柳生但馬守宗矩に密かに寺の守護を命じる。宗矩は、嫡男十兵衛を凌ぐ剣客でもある実の娘・矩香を男子禁制の東慶寺に遣わすが、そこに現れた人物こそは・・・!?柳生新陰流と朝鮮妖術師の対決、三代将軍家光の密やかな恋、朝鮮出兵に隠された真実など、時代小説の面白さ満載の破天荒な力作伝奇長篇。



ぼくのかんがえたさいきょうのやぎゅう。


というかもう冒頭からして「やっちまったな荒山せンせ」(注:いい意味で)と思わざるを得ない本書。何しろ主役は柳生十兵衛・・・の姉(!)、柳生矩香。もちろん美形で剣術の業前は十兵衛よりも上というチートクラスの柳生であり、もう「お前のよーな柳生がいるかーッ!」と思わず絶叫してしまいたくなるほどのキャラです。もちろん荒山せンせお得意のでっち上げであり捏造キャラなのでそのツッコミはまったくもって正しいのでもう色々と手遅れだ。(何がだ


女人禁制の駆け込み寺を舞台に柳生矩香嬢が胸のすくような活躍をし、十兵衛さンはシスコンっぷりを隠しもせず、いつものごとく朝鮮妖術が絡み、僕らのヒーロー宗矩さンは腹黒さが全開であり、他の作品から予想外の人間が乱入するという結構なカオス感溢れるストーリーが展開される・・・のですが、しかしながら本書はこの酷い(注:褒めてます)展開の割りに荒山濃度がかなり薄く、荒山作品初心者の方でもすンなりと読めるのではなかろうかという気がいたします。文庫化してるので入手難易度も低いと思うし。愉快極まりない楽しい時代小説なのでみな読ンでみればいいンじゃないかな