平田真夫「水の中、光の底」



水の中、光の底

水の中、光の底


赴任した先の地方の町の高校には、校庭の中央に路面電車の終着駅があり・・・酒場にボートを貸してもらいワイン片手に海へ出ると、月を隠した夜空の雲が凝集して小爆発を繰り返し・・・酒場の地下深く、小さな部屋に穿たれた四角い水面。それが、そこにしかないという「海」であり・・・全面ガラス張りのカフェでは、大雨に水没して帰れなくなった男女が時間をつぶし・・・少しずつ重なり合った十の物語世界を、一人の酒場の主人がつなぐ。ノスタルジックな、日常のSF幻想。



SFは絵だねぇ。


ビジュアルが半端ない幻想的な作品がてンこ盛りの作品集でございました。幻想的な叙情を描写するこの文章力がいやほンとすげぇのなンのって。慌てず騒がずゆっくりじっくりこの文章に浸り、このビジュアルセンスに酔いしれるとよいよいよい。ワシもうすげぇ好きですこれ。


また作者はかつての名作ゲームブック展覧会の絵」の作者森山安雄氏と同一人物でありますゆえ、ゲームブッククラスタ的にも見逃せないところです。「展覧会の絵」のセンスは本書でも十分以上に発揮されていましたぜ。