ニック・ピゾラット「逃亡のガルヴェストン」



逃亡のガルヴェストン (ハヤカワ・ミステリ)

逃亡のガルヴェストン (ハヤカワ・ミステリ)


ついにおれの運も尽きたか───。ロイはこれまで闇の仕事で生きてきた。しかし癌の宣告直後、ボスの裏切りにあい、追われる身となってしまう。成り行きで道連れとなったのは、ロッキーという家出娘。金に困って娼婦をしていたらしい。こうして、孤独を愛する中年の男と、心に深い傷を負った女の奇妙な旅が始まった。ロイは、ロッキーがまともな道を進むことに残りの人生を賭けようとする。だが、果てなき逃避行の先には…。ダークな情熱と、静かなる感動をたたえた、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作。



先の展開が読めるとかそういうことはどうでも良い。


いやだって感の良い人っつーかある程度この辺のハードボイルドというかアメリカ文学っつーか、その辺に慣れ親しンでる人ならば序盤読ンだだけである程度話の筋が読めると思うのだけど、そーゆーのは正直どうでもよい。読ンでて面白いか否かが重要だ。そして本書は大変面白い。それがワシ的には大いに重要なことなのですよ。


ミステリ的な仕掛けはほぼなく、本書はロイとロッキーの生き様がメインで語られるのですが、もうロイとロッキーが世間から弾かれたダメ人間ながらも再起を諦めずに前を向いているあたりがもうグッとくる。現在と過去のパートで語られるロイの人生におけるその絶望とかいま見えた希望とかもうベタだけど泣けるぜ。本書は生きる場所(そして死に場所)を探す人々の物語なのだなぁ、としみじみ思ったことよ。いい話であった。