グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ「シャンタラム」(全3巻)



シャンタラム(上) (新潮文庫)

シャンタラム(上) (新潮文庫)



シャンタラム(中) (新潮文庫)

シャンタラム(中) (新潮文庫)



シャンタラム(下) (新潮文庫)

シャンタラム(下) (新潮文庫)


男は武装強盗で20年の懲役刑に服していた。だが白昼に脱獄し、オーストラリアからインドのボンベイへと逃亡。スラムに潜伏し、無資格で住民の診療に当たる。やがて“リン・シャンタラム”と名づけられた彼のまえに現れるのは奴隷市場、臓器銀行、血の組織“サプナ”───。数奇な体験をもとに綴り、全世界のバックパッカーと名だたるハリウッド・セレブを虜にした大著、邦訳成る。



文庫3巻で1800ページオーバーと超長いお話でありましたが、ぶっちゃけもっと量があっても良かった。・・・いやマジに。それほど面白かったのよこれ。まったくもって前知識なしにとりかかったので、冒頭数ページは一体どーなることやらと思っていたのですが、これがまぁめっぽう面白く。インドはボンベイを舞台に展開されるある男の一大叙事詩なのですが、読ンでて「おいおい」と思ってしまうほどの奇想天外な冒険譚。いや冒険か?何かもう物語のありとあらゆる要素が詰まっているンだよなこれ。ミステリ・冒険・恋愛・ノワール・哲学、エトセトラ。これらが渾然一体となりカオスな味わいとなりまったくもって先が読めぬわけでして、めっちゃ展開早いのも相成って夢中で読まされてしまいましたよ。


で、もっと量があっても良かったってーのは割とこれ勿体無い書き方してまして。作中で色々なエピソードが展開されるのですが、その量が尋常でないため「おいその話もっと掘り下げろよ!面白くなるところだったろ!」と思わずツッコミ入れたく成るくらいに端折られた話とかが結構あるンですよね(´・ω・`) マフィアの黒幕の子供預かってスラムで生活するくだりとかめっちゃ面白くなりそうだったのに、どうしてあっさり終わってしまったのだ。書けよおうおう。


全3冊とかなりの長さですが、大量に盛り込まれたエピソードが釣瓶撃ちに展開されるのできっと飽きずに読み通せるはず。秋の夜長にがぶっと取り組まれてはいかがでしょうか。ワシとしては熊がらみのエピソードが印象に残り申した。いや残ったというか残らざるを得なかったというか。このエピソードで登場した名言が名言過ぎたので、いつかどこかで使ってみたい。名言が何かはこの本読ンだ人なら10人いて11人はすぐにわかるはず。


インドという国は懐が実に深いなー。こーゆーのは海外の本じゃないと出せぬ味よね。