北野勇作「ヒトデの星」



ヒトデの星

ヒトデの星


自分をもうひとり作ることにした。それ以外に、方法はない。やっと見つけた自分の居場所。失うわけにはいかない。
いつまでもかわることのないあの輝き─── はるか未来のむかし話。


昔々あるところに───どんなものでも作ることができる工場があった。その工場は、世界を泥の海にしてしまう。
昔々あるところに───ヒトデから作られた男がいた。ある日のこと、男は、仕事帰りに見たことのない箱を拾う。男の生活は一変し、ささやかな世界の再生がはじまった・・・。



愛らしくも切ない、ノスタルジック溢れる世界で展開されるおとぎ話。まぁいつもの北野ワールドらしく作中の語り手でもある「ヒトデナシ」が考えるところのアイデンティティの有り様などは哲学めいたものがあるのですが、基本は藤子不二雄的すこしふしぎなSFファンタジーであり、小難しいこと考えずともこの懐かしくも未来的な哀愁あふれるこの世界に浸るがいいさとワシは思うのでありました。


あと本書は作中で使われる「色」がかなり特徴的。全体的に茶色(どろンこ世界なので)なビジュアルなのですが、ときおり使われる赤色がえらく印象的でした。演出がかなる巧みなので、この辺は読ンでてはッとするンだよなー。


ワシとしては大いに楽しンだ本書。北野作品はどれも外れなしなので、未読の方はぜひぜひ。