S・J・ボルトン「毒の目覚め」(上下)



毒の目覚め 上 (創元推理文庫)

毒の目覚め 上 (創元推理文庫)



毒の目覚め 下 (創元推理文庫)

毒の目覚め 下 (創元推理文庫)


その夏、英国の小さな村では蛇が異常発生していた。獣医のクララはある老人の死に疑問を感じる。死因は蛇の毒だが、1匹に咬まれたにしては毒の濃度が高すぎるのだ。さらに近所の家で、世界で最も危険と言われる毒蛇を発見する。数々の事件は、何者かの策略なのか?言い知れぬ恐怖と謎に挑む女性獣医の姿を圧巻の筆致で描きMWA賞受賞に輝いた、荘麗なゴシック・ミステリ。



村には、決して語られない「記憶」があった。


という本の帯の一文がえらく目に付く本書ですが、確かに村の過去が明らかになるあたりからのストーリーのテンションは異常でありました。ストーリー全体に絡む「蛇」のモチーフ、これが本書のキモになるわけなのですが、このガジェットひとつでパニック・サスペンス・ホラーと多岐にわたる内容を巧いことミックスしてまして、それなりの長さの内容にも関わらずダレることなく読み通せます。村と蛇がおりなす過去は結構なヘビーさ(今上手いこと言った)があり、クララの過去も結構なヘビーさ(また上手いこと言った)もあるのですが、全体的にそこまで陰鬱な印象がないのはなンでだろうな。じめーっとした風ではなく乾いた風的な。それがいいか悪いかっつーと本書では割といい方向に向いていると思うけど。


主役のクララも結構魅力的で、コンプレックスを抱えた複雑な人間として良い感じに描写されておりました。彼女の成長譚でもあったな。