法月綸太郎「ノックス・マシン」




上海大学のユアンは国家科学技術局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容について確認したいというのだ。その論文のテーマとは、イギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール、「ノックスの十戒」だった。科学技術局に出頭したユアンは、想像を絶する任務を投げかけられる…。発表直後からSF&ミステリ界で絶賛された表題作「ノックス・マシン」、空前絶後の脱獄小説「バベルの牢獄」を含む、珠玉の中篇集。



本格ミステリ」をモチーフにしたSF短篇集・・・というよりは異色短編風味というか、異色短編の皮を被ったクイーン論考というか、まぁとにかくヘンテコな短篇集でありました。以下、各作品について。


「ノックス・マシン」・・・言わずと知れたノックスの十戒をテーマにしたタイムトラベルSF。法月綸太郎風のノックスの十戒論でもあるのかな。「探偵小説に中国人を登場させてはならない」という一文からここまで愉快な展開になるとは。


「引き立て役倶楽部の陰謀」・・・探偵小説の助手たちが集う「引き立て役倶楽部」を舞台とした移植短編・・・というかバカミス法月綸太郎風の「クリスティー失踪の謎」・・・というよりはクリスティー論でもあるのかな。ヴァン・ダイン御大に何か思うところでもあるのか、というよーな作品(おい)。お馬鹿で素敵だ。


「バベルの牢獄」・・・バカSF。これ小難しい理屈つけてるよーで、やってることはシンプルなバカ極まりない話でありもういい笑顔しか出ないっつーかこのネタは思いつくのはいいけど仕上げるの苦労したンだろうなぁ、という作者の苦労を慮ってしみじみしてしまったワシでありました。いやー笑った。


「論理蒸発───ノックス・マシン2」・・・「ノックス・マシン」の続編でもあり「シャム双子」「チャイナ橙」論考でもある、クイーン愛に溢れまくった作品。というかクイーンの洗礼を受けた人間はシャム双子になぜ「読者への挑戦」がないのか考えずにはおれぬのか。読了後に法月氏が「九尾の猫」の洗礼から多少は解放されたのかな、という気になりました。(いや逆にますます囚われているのかもしれないけど・・・)




全体的に結構バカ度も高く、その手の好事家も要チェックの作品となっておりますよ。ワシとしては大いにオススメしたいところです。