ジャン・ヴォートラン「パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない」



パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない (ロマン・ノワールシリーズ)

パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない (ロマン・ノワールシリーズ)


パリ効外の団地で、結婚式をあげたばかりの花嫁が射殺される。純白のウエディングトレスの胸を真っ赤に染めた花嫁が握りしめていたのは一枚の紙切れ。そこにはこう書かれてあった。「ネエちゃん、おまえの命はもらったぜ」。シャポー刑事はその下に記された署名を見て愕然とする。ビリー・ズ・キック。それは彼が娘のために作った「おはなし」の主人公ではないか。続けてまた一人、女性が殺される。そして死体のそばにはビリー・ズ・キックの文字が・・・。スーパー刑事を夢見るシャポー、売春をするその妻、覗き魔の少女、精神分裂病の元教師。息のつまるような団地生活を呪う住人たちは、動機なき連続殺人に興奮するが、やがて事件は驚くべき展開を見せはじめ、衝撃的な結末へ向かって突き進んでゆく。



ゴッド。いわゆるバカミス。というかまたフランス産かよ!ほンとフランスミステリはヘンテコな作品しかねーな!(満面の笑みで


ええと、あらすじ読む限りではメタ的な展開をするよーにも読めますが、本書はまったくもってそンなことはありませンのでごあんしんください。というかそンな高度なテクニックは何一つ使われてねぇし。でも作者がノリノリで書いたかっつーと多分相当冷静にやってると思われるけど。


内容の傾向としては一応ノワール・・・いや違うな、ええと団地を中心とした群集劇・・・いやこれも違うな。ええと、何だろこれ。混沌。そう混沌だな。とにかく登場キャラがほぼ狂っておりその狂ったキャラたちがどいつもこいつも狂った行動しかしないので、もうそりゃ話はカオスそのものですよ。エントロピー増大ですよ。ブレーキが壊れたダンプカーですよ。暴走特急ですよ。そりゃ話の大筋は上のあらすじで合ってるし、登場するキャラクターたちがみせる悲哀みたいなのもあるのだけど、もうそーゆーのは全てこの作品が生み出す狂気という名のストリームに派手に巻き込まれてしまい全てが渾然一体、もうカオス極まりない仕上がりになっておるわけです。ワシのよーなボンクラは最終的にはもういい笑顔を浮かべて「狂ってるなぁ」と言うことしかできぬものでありました。いやもういいもの読ンだ。


ビリー・ズ・キックとは一体何者?という謎もさることながら、ビリーを中心としたその他登場キャラがおりなすユーモア溢れる悲哀感も結構な読みどころであり、ほンとよくできた作品だと思いますのでワシとしてはこれを大いにオススメしたいところです。というわけで当ブログを見てくれてるよーな方はきっと気に入ると思われますので是非に。


ちなみに文庫になってないし絶版なので古本でしか入手できないってのがちと辛いところか。ぐぬぬ・・・