マックス・バリー「機械男」



機械男

機械男


僕は機械しか愛せない。人間は非論理的だ。恋人も友人もいないけれど、でも人間と関係を結ぶなんて非効率で面倒くさいじゃないか。
そんなある日、僕は職場の事故で片脚を失う。そのときひらめいたのだ――エンジニアとしての才能を注ぎ込んで、生身より断然高性能の脚を開発しようと。名づけて〈美脚〉。その出来は素晴らしく、僕は残る片脚も機械化した。
これが僕の未来を開いてくれた――僕に共感を抱いてくれた初めての女の子、ローラとの出会い。恋の成就。会社が与えてくれた大規模な開発チーム。思いのままに研究を進められる自由。だが僕は知らなかった、すべての背後に社の軍需部門の思惑があったことを。やがて暴走をはじめる開発チーム。姿をあらわす〈機械化兵士〉開発計画。それは僕の彼女、ローラまでも巻き込んでゆく。
大地を揺るがして疾走し、轟音とともに跳躍する機械の脚。それを武器に、理系オタクは恋人のために死地に赴く。ガジェットとイノヴェーションの世紀を切り裂くギーク・サスペンス。



こいつぁキてるぜ!


ええと、上記あらすじで一読瞭然だと思うのですが、まぁつまりは「きが くるっとる」という話なわけであり大変ワシ好みの作品だったでございますよ。「あれ?機械の身体の方が便利じゃね?生身要らなくね?」という改造人間の悲哀などドブにでも捨てちまえとばかりのこのステキ思考で最初から最後まで突っ走る暴走特急、それが本書であります。まぁ石川賢クラスタ的には「理系オタク版極道兵器」と言えばわかりやすいかな。





この画像で本書の半分くらいの魅力は伝えられるとアタイ信じてる。そして「あれ?機械の身体って結構便利じゃね?」と会社と周囲の人間が気づいてしまい、こやつらが我先に身体を機械に置き換えたがり、そして恋人ローラは機械の身体フェチでありいいぞもっとやれというスタンスであり、ストーリーは「狂気の国では正気こそが異常」と言わンばかりのもはやファンタジーと言っていいほどの混沌っぷりを見せ始めます。終盤の展開はカオス極まりなく普通に「ええええええ」と声出たよ。いや流れ的には何も不自然ではないけど。つーかむしろ望む展開だったけど。この展開は萌える。いや燃える。いやいややっぱ萌える。


冒頭の「子供のころ、ぼくは列車になりたかった」という文章が本書の全てである大変ボンクラな素晴らしい作品であり、この世に生きとし生けるもの全てのボンクラ愛好家はマストと言ってよい本書。いいからワシを信じて黙って読むがよいよいよい。いやもうすげぇぜ。