小説感想 横溝正史「悪魔が来たりて笛を吹く」




世の中を震撼させた青酸カリ毒殺の天銀堂事件。その事件の容疑者とされていた椿元子爵が姿を消した。
「これ以上の屈辱、不名誉にたえられない」という遺書を娘美禰子に残して。以来、どこからともなく聞こえる、"悪魔が来たりて笛を吹く"というフルート曲の音色とともに、椿家を襲う七つの「死」。
華族の没落と頽廃を背景にしたある怨念が惨劇へと導いていく───。名作中の名作と呼び声の高い、横溝正史の代表作!!



うむ、やはり横溝はいい。実にいい。


むか〜しTVで見たことあって読んでる最中に犯人とか思い出してしまったんですけど、それでも小説として十分すぎるほど完成されているのでまったく問題なく最後まで楽しく読めましたよ。このドロドロ&ギスギスした人間関係と陰惨な世界観こそ横溝御大の持ち味よのぅ。いくら他の作家が「横溝っぽい」内容の本を出しても、鳥が巣へ帰るように、鮭が生まれた川へ帰るように、やはりたまには本家を読んで「探偵小説」の風を取り入れたくなるものですぜ。つーわけで大いにワシは本書を堪能したのでしたとさ。


しかし横溝氏ってとてつもなく小説の構成が巧かったんだなぁ、と今更ながら思い知りました。雑誌連載だった、ってこともあるんだろーけど・・・。章の切れ目の引きが強いこと強いこと。思わせぶりな事件やら展開が惜しげもなく詰め込まれているため、続きが知りたくなって思わずグイグイとページを捲らされてしまいます。これは読み始めたら止められないよなぁ・・・。さすが横溝御大、偉大すぎるぜ。


つーか読み終えた今、むしょーに映像で横溝ワールドを体感したくなっているんですがワシは一体どーしたら。(よし、早速「犬神家」を入手してくるんだっ!)