小説感想 ヘンリ・セシル「法廷外裁判」



法廷外裁判 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

法廷外裁判 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)


会社社長のロンズデイル・ウォルシは嘘が大嫌いな男だった。その彼が殺人罪で告訴され、終身刑を宣告された。おれは証人の偽証によって有罪になったんだ!彼は不撓不屈の精神で脱獄を計画し、まんまとそれに成功した。さらに、かねて白羽の矢を立てていた名判事を自宅に監禁し、誘拐もどきの手段で、事件の関係者を判事邸へ集めた。そこで彼は、裁判のやり直し、すなわち法廷外の再審を要求したのである!目をまるくする判事や弁護士をしりめに、ついに珍妙な裁判の幕は上った。ブラック・ユーモア風に展開する異色法廷ミステリの傑作。



偽証ばかりの裁判で有罪を受けたウォルシさんは「喰らわしてやらねばならんッ!しかるべき報いをッ!」とありあまる金を使った強引かつ細心な作戦を展開し、無事脱獄。そして関係者一同をこれまた強引かつ細心な方法で集め、「これから本当の裁判を開始しますがいいですねッ!」と高らかに宣言、ここに法廷外で行われる裁判が開始された・・・という、粗筋だけ聞いたら「何そのバカミス?」というシロモノなのですが、これがもう滅法面白いったらありゃしない。


とにかくテンポよい展開、裁判のサスペンス性、魅力ある各キャラクター、ユーモア溢れる世界観、もうどれをとっても一級品。特に最初はやる気なさげだった判事が、途中である出来事をキッカケに真摯に裁判に取り組み始めるあたりからの面白さが半端ありません。そして最後に明らかになる真相、ここで気付かされる仕大胆なミスディレクションの仕掛けっぷりにはほんと舌を巻かされましたともさ、ええ。オチのセリフも気が利いてるね!こんなに面白いのに何でこれが絶版なのか早川書房を問い詰めたい。小一時間ぐらい問い詰めたい。


というわけで古本屋さんとかで見つけたら是非とも手に取って読んでみるが吉、と思うNOBさんでしたとさ。