小説感想 相原大輔「キルケーの毒草」



キルケーの毒草 (カッパノベルス)

キルケーの毒草 (カッパノベルス)


作家・鳥部林太郎は、行方不明になった知人の手がかりを求めて、好事家として名高い桐嶋男爵の邸を訪れる。折しも、男爵邸では晩餐会が催されていた。飛び入りで参加する鳥部。しかしそれが、おそるべき連鎖殺人の幕開けだった。大正デカダンスの濃密な薫りと漆黒の闇に紛れて、死体は消え、怪人は暗躍する。新進気鋭推理作家が驚くべき飛躍を遂げた、衝撃の傑作!



KAPPA-ONE第2期生の相原大輔氏による2作目。


バカミスじゃないやん!


いやー「首切り坂」のようなものを予測していたんですが、いい意味で期待を裏切られましたよ。実にまとも。前作のよーな「えー?!」といったものはこれっぽっちもなかったです。文章とか用語がいい雰囲気だしていて、大正時代っぽさがいい感じに表現されていたと思います。
どっかのミステリ作家みたいに「文章がヘン」「言い回しが時代がかりすぎ」といったものも感じられなかったので(少なくとも読んでる間は気にならなかった)、小説家としての技量は結構高いのではないでしょうか。確実に前作よりはレベルアップしているなぁ、と感じました。(そこはかとなく京極夏彦風味なのはご愛嬌?)


トリック的には目新しいものは特になかったんですが、既存のものを巧くアレンジして使用したなぁ、という感じです。二転三転するプロットに対応すべく、トリックもそれ相応のものを捻出しようとしたのでしょうが・・・。まあでも解決をスマートにするためにはこの手法しかないのかな。どーせならもっとトリッキーなアイディアを出して、それを生かすようなプロットを組んで欲しかったところだけど。(そーいった意味では首切り坂は突出しているなぁ)


1000枚クラスのボリュームがありますが、長さに見合った面白さはありました。
2作目にしてかなり化けたと感じさせられた作品です。
このグレードが保たれるなら、今後もかなり期待できるなぁ。
次回作が楽しみ。


あと個人的なものなのですが、タイトルは「キルケーの毒草」よりも「幽霊坂」の方がよかったなぁ。登場人物が「首切り坂」と被っているんだから、どーせなら「〜坂」で統一して欲しかったところです。